角形鋼管をハッカーで玉掛けして移動中、ハッカーから外れて落下した
原因
ハッカーのつめ2本を、1本ずつ角形鋼管の端部にまたいで引っ掛けていたが、ハッカーのつめの奥行きが浅く、 引っ掛かりが不十分になったこと及び2台のクレーンの別々の操作によりハッカーをつる玉掛け用チェーンのつり角度によりハッカーを外す方向に力が働いたこと。
玉掛け用具としてハッカーを用い、かつ、クレーンで共づりを行っていた危険な状況下で、荷の下に入って作業を行っていたこと。
玉掛け作業基準、ハッカーの使用基準等、2台の天井クレーン共づり作業について作業標準等に基づく具体的な定めがなく、関係労働者に対する安全教育及び安全管理が不十分であったこと。
対策
玉掛け用具であるハッカーで鋼管をつり上げる場合には、ハッカーはつめの奥まで差し込んだ状態を保持させること。
ハッカーを用いて玉掛けを行った荷がつり上げられているときは、つり上げられた荷の下に労働者を立ち入らせないこと。
玉掛けチェーンは絞り込んでつり上げることなどを盛り込んだ玉掛け作業基準の他、ハッカーの使用基準等、天井クレーン共づり作業について作業標準書を作成すること。
安全衛生教育の実施等により、関係労働者に作業手順を周知し、安全衛生に関する規律の確立を図ること。
天井クレーンの点検中に、ドラムとトロリフレームとの間にはさまれ死亡
原因
巻上げドラムを回転させた状態で、その近くでブレーキの調整作業を行ったこと。巻上げドラムを回転させながら、近づいて作業を行ったため、安全帯のロープ部がドラムに巻き込まれた。
クレーンを運転する運転士と被災者とがお互いに見えず、適切な合図・連絡ができない状態で、ドラムを回転させ調整作業を行ったこと。
安全な作業のための標準作業手順書の作成と作業者への安全衛生教育が行われていなかったこと。
対策
巻上げドラムの回転中にその近くで調整作業を行わないこと。巻上げドラムを回転させる必要がある場合は、点検作業者に合図し、巻上げドラムから離れさせること。
クレーンの点検作業では、適切な合図や連絡などが行えるようにして実施すること。運転士と点検作業者がお互いに見えない場合は、合図や連絡を行う者を配置して作業を行わせること。
安全な作業のための作業手順書を作成した上で、これをもとに作業者への安全衛生教育を行わせること。
クレーンにより生コンバスケットを運搬中に荷振れして、生コンバスケットが落下
原因
フックの外れ止め装置が有効に作動しなかったこと。「専用のつり具」のフックの外れ止め装置のバネが折れていて、外れ止め装置の作動ができない状態であった。
生コンバスケットが揺れやすい状態であったこと。生コンバスケットはその形状が振れ易く、一度荷振れが起きると、モルタルの振動により振れが大きくなり止めるのが困難となること。
外れ止め装置の点検が未実施であった。
運転を停止するとき、位置を確認するためペンダントスイッチを操作しながらバスケットに近づいたこと。
安全管理体制が確立していないこと。
クレーンの運転業務に関わる特別教育を実施していないこと。
対策
玉掛け作業を行う際は、異常のあるつり具を使用させないこと。フック、ワイヤーロープ、つりチェン、専用のつり具等について、作業前に点検し異常があれば使用してはならない。
荷振れし易い生コンバスケット等について取扱い方法等の基準を定め周知させること。生コンバスケットのように形状からみても荷振れし易いものをクレーンで運搬する場合には、 運転方法、玉掛け方法、玉掛け用具等について荷に適した基準を作り関係者に周知する。
始業点検で外れ止め装置の点検をさせること。
クレーン作業には合図者を定めて配置すること。
安全管理体制を確立すること。
積載型移動式クレーンで荷をつり上げ旋回した時にクレーンが倒れ、トラックとの間に挟まれる
原因
定格荷重が約0.69トンの状態で、質量約1トンのポンプをつり上げ、旋回作業を行ったこと。
移動式クレーンの運転者が、無資格者であったこと。
つり上げる荷の質量等を確認し、荷下ろし方法の計画を作成し、作業者に周知していなかったこと。
作業者に移動式クレーンを用いた作業に関する安全衛生教育を行うことなく作業を行わせていたこと。
対策
つり上げ荷住が1トン以上の移動式クレーンの運転は、移動式クレーンの免許を有する者又は小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者に行わせる。
1トン以上の玉掛け業務は、玉掛技能講習を修了した者に行わせる。
作業前に、つり上げる荷の質量、移動式クレーンの能力、設置場所の検討を行い、安全作業のため計画を作成すること。
安全管理体制を整備し、管理者に対しその責任と権限の履行を徹底させること。
管理者及び労働者に対し、基礎的な安全衛生教育及び移動式クレーンを使用した作業等危険業務に対する教育を実施すること。
工場内の天井走行クレーンの電気系統の修理を終えて通電したところ修理作業者が感電
原因
作業車Cが、作業デッキ場にいるにもかかわらず、安全を十分に確認しないで、作業指揮者Aが、作業者Bに指示してクレーン電源を入れたこと
クレーン電源は三相交流220Vであり、トロリー線と集電装置には、電源の投
入と同時に同電圧がかかり、修理後の電源を入れての確認作業は、活線作業
となることの認識が作業指揮者Aにも作業者Cにも不十分であったこと
クレーンの電気系統の修理をクレーン運転者に実施させたこと
作業当日は気温も高く、また、湿度も80%を超えていて、作業車は発汗して
感電しやすい状態にもかかわらず、絶縁用保護具を使用しないで作業を行ったこと
作業デッキ内は狭く、暗かったこと
安全管理体制が不十分なこと
対策
構内下請事業者にクレーンなどの発注者所有の設備を使用させる場合には、クレーンの予定外の修理を可能な限り避けるため、十分に整備点検したものを貸与すること。
構内下請事業者に貸与されている機械設備について、故障が発生した場合等非定常作業における作業手順を定めること。特に、深夜業務の場合を考慮して作業手順を定めること。
電気取扱作業は、低圧の場合であっても、原則として、保全専門グループに
実施させること。発注会社による統括安全管理体制を確立し、混在する下請
事業所の作業範囲の明確化、修理作業などの否定上作業基準の作成など安全
管理を徹底すること。
天井クレーンで薄板の切断機をつり上げ中、荷が落下
原因
玉掛けを確認せずにクレーンを操作したこと
共同作業の打合せを行っていなかったこと
作業指示がなされていなかったこと
対策
クレーン作業の手順を見直すこと
クレーン作業者等の再教育を行うこと
作業指示の明確化等の安全管理を実施すること
天井クレーンの点検中に、ドラムとトロリフレームとの間にはさまれ
死亡
原因
巻上げドラムを回転させた状態で、その近くでブレーキの調整作業を行ったこと。巻上げドラムを回転させながら、近付いて作業を行ったため、安全帯のロープ部がドラムに巻き込まれた。
クレーンを運転する運転士と被災者とがお互いに見えず、適切な合図・連絡ができない状態で、ドラムを回転させ調整作業を行ったこと。
安全な作業のための標準作業手順書の作成と作業者への安全衛生教育が行われていなかったこと。
対策
巻上げドラムの回転中にその近くで調整作業を行わないこと。巻上げドラムを回転させる必要がある場合は、点検作業者に合図し、巻上げドラムから離れさせること。
クレーンの点検作業では、適切な合図や連絡などが行えるようにして実施すること。運転士と点検作業者がお互いに見えない場合は、合図や連絡を行うものを配置して作業を行わせること。
安全な作業のための作業手順書を作成した上で、これをもとに作業者への安全衛生教育を行わせること。
トラッククレーンでつり上げ作業中、突風で補助ジブが折れ、つり荷が落下
原因
突風により過荷重となったこと。
過負荷防止装置が正しく設定されていなかったこと。
安全な作業方法について、関係労働者に教育されいなかったこと。
対策
突風時における長尺な荷のつり上げを行わないこと。
過負荷防止装置には正しい作業条件を入力すること。
安全な作業方法について、関係労働者に教育すること。
クレーンの走行モーター取付部の破損
クレーン概要
種類 ホイスト式橋形クレーン
つり上げ荷重 10.173t
スパン 30m
揚程 10.554m
走行速度 30m/分
状況
定期自主検査記録に異常等の記載がないことを確認して、機体の検査を開始した。
走行装置の外観検査において、走行モーターの固定ボルト3本が緩んでおり、他の1本の固定ボルトの取付部が破損しているのを発見した。
緩んでいたボルトを締め直して走行してみたところ、走行減速歯車の噛み合いにも異常が認められた。
起動や減速時の負荷や衝撃が大きいのではないかと思われた。
クレーンの不適切な走行車輪止め
クレーン概要
種類 高脚ジブクレーン
つり上げ荷重 41.7t
揚程 34m
状況
機体の外観検査を終え、走行レールの異常の有無を確認しながらレール端まで行くと、緩衝材と車輪止めが備えられていた。
車輪止めの高さを測定すると80mmで、走行車輪の直径の8分の1の高さであった。
反対側のレール端にも車輪止めが備えられており、高さを測定すると同様に80mmで、この車輪止めから2m離れた位置に緩衝材が設置されていた。 このため、クレーンが車輪止めを乗り越えないと緩衝材に当たらない状態であり、クレーンが走行レールから外れるおそれがあった。
クレーン構造企画では、「走行クレーンは、クレーンの走行方向の両端部に緩衝装置若しくは緩衝材を、又は当該走行クレーンの走行レールの両端部若しくはこれに準ずる箇所に、 緩衝装置、緩衝材若しくは当該走行クレーンの走行車輪の直径の2分の1以上の高さの車輪止めを備えるものでなければならない。」とされており、どのような理由でこのような車輪止めと 緩衝材の設置がなされたのかは不明であった。
車輪止めの位置を変更するとともに、走行車輪の直径2分の1以上の高さのものに付け替えられた。
移動式クレーンのジブ上部溶接部分の剥離
クレーン概要
種類 ジブが伸縮するホイールクレーン
つり上げ荷重 45t
主ジブ長さ 39m
状況
定期自主検査の記録等の書類確認の後、実機の検査に入り、主ジブを水平にして地上で外観検査を行ったところ、二段目ジブの上面が膨張しているように見受けられた。
近付いて確認したところ、二段目ジブ先端から約1.6mの位置を中心に長さ750mにわたり、ジブ上板と側板上部の補強板溶接部が左右両側とも剥離していた。
剥離によってできた隙間の間隔は、最大で15mmであった。
二段目ジブの長さは7.15mで、剥離が見られた位置は、三段目ジブの根元が二段目ジブとラップし、荷重が集中的にかかる部分であった。
この移動式クレーンは製造されてから12年間使用されており、原因としては、長年の使用による繰り返し荷重で溶接部分に亀裂が発生、進展したものと推定されるが、一時的に過荷重が生じたことも考えられる。
剥離した溶接箇所には錆も見られ、ある程度以前から亀裂が生じていたと思われる。
昨年のクレーン及び移動式クレーンの死傷者について
2014年もあと少しで終わりです。本年で起きた、クレーン及び移動式クレーンの死傷者数
データも、そろそろ統計される頃ではないでしょうか。改めて、昨年の死傷者数のデータを見てみましょう。
2013年のクレーン及び移動式クレーンの死傷者数
製造業 784人(44.0%)
建設業 470人(26.4%)
運輸交通業 178人(10.0%)
貨物取扱業 40人(2.2%)
鉱業 3人(0.1%)
その他の事業 308人(17.3%)
○全体の死傷者数 1783人
2013年のクレーン及び移動式クレーンの死亡者数
建設業 21人(41.2%)
製造業 16人(31.4%)
陸上貨物運送業 6人(11.8%)
港湾荷役業 1人( 1.9%)
その他の事業 7人(13.7%)
○全体の死亡者数 51人
2014年のデータが発表されたら、昨年のデータと見比べてみては
いかがでしょうか。